1-8『五森の公国の砦での戦闘』


数時間後、派遣小隊は北の砦へ到着

37隊兵B「おい、なんだありゃ?」

37騎士隊の陣近くに、派遣小隊に護衛された馬車の列が現れる

37参謀「たぶん、あれが例の一団だ。なるほど変わった乗り物に乗っているな…」

37隊兵B「あれがですか…」

37参謀「隊兵B、隊長か副隊長を呼んで来い。」

トラックは馬車の列から離れ、陣の近くで停車する

隊員E「降車だ、迅速にな。降車後は分隊ごとに整列、分隊長は点呼を。」

指示を出している途中で、隊員Eはこちらへ駆け寄ってくる人物に気付く

37隊長「すみません!あなた方が、派遣されてきた一団ですか?」

隊員E「はい、そうですが…あなたは?」

37隊長「失礼。木洩れ日の街駐留、第37騎士隊の隊長を務めます、37隊長です。」

37隊長は姿勢を正す

隊員E「陸上自衛隊、派遣小隊指揮官、隊員E二等陸曹です。」ビッ

隊員Eが敬礼を返し、その後二人は握手を交わした
挨拶を終えた所へ、各分隊長が報告に来る

隊員A「二曹、報告します。第一分隊点呼完了、異常なし。」

隊員G「第二分隊異常なし。」

隊員E「分かった。ああ、紹介します。私の部下の隊員A三曹と隊員G三曹です。」

隊員Eの紹介に会わせ、両名は敬礼する。

37隊長「これはご丁寧に…そうだ、参謀!来い!」

37隊長は近くにいた参謀を呼ぶ

37参謀「はい?」

37隊長「コイツ…失礼、彼が参謀を務めます37参謀です。参謀、こちらが一団の指揮官の隊員E殿。
     それから隊員A殿と隊員G殿だ。」

参謀「37参謀です、今回はよくお越しいただきました。」

37隊長「副隊長もいるんですが、今は少し出払ってまして…申し訳ない。」

隊員E「とんでもありません。それでは、ここを指揮されているのは
    あなたということでよろしいですか?」

37隊長「あ…いえ、正確には私の上に最高指揮官がいるのですが…と?」

37参謀「ん?」

話の途中で、37隊長達は微かな地響きを感じた

ギュラララララ…

37隊長「な、なんだ?」

隊員E「ああ、ご心配なく。我々の同胞が近付く音です。」

音は次第に大きくなり、やがて新小型トラックに護衛された自走迫撃砲が姿を現した

ギュララララララ!

37隊兵A「うぉぉ!?なんかすげぇのが来たな…」

37魔法兵A「バケモンだぜ…」

やがて自走迫撃砲は適当な位置に停車

120車長「このへんでいいだろう。120操縦手、車両を旋回させろ。
     他は測距の準備だ、モタモタするなよ!」

乗員が降車し、砲撃の準備を始める

隊員E「隊員G、小隊も戦闘準備を。終わったら何人か自走120を手伝わせろ。
    残りは待機だ。」

隊員G「了解。」

隊員Gは小隊の所へと戻ってゆく

隊員E「ああ、失礼しました。それで、その最高指揮官殿は?」

37隊長「ああ、なんといいますか…少し面倒なことになりまして…」

隊員E「面倒なこと?」

37隊長「とりあえず、本部にご案内します。そこで詳しくお話しましょう。
     参謀、引き続きここを頼む。」

37参謀「分かりました。」


一方 月詠湖の公国 領内の最東南

鍛冶妹「大量大量!このへんは薬草の宝庫なんだよね〜。」

一人の少女が丘の麓で薬草を集めていた

鍛冶妹「さてと…そろそろ帰ろっかな?」

ゴォォォォ…

鍛冶妹「うん?」

丘の向こうから音がする

グォォォォ!!!

と、思った瞬間、丘の影に隠れた道の先から指揮車が現れた

鍛冶妹「ぎょぇぇぇぇ!?」

指揮車はエンジン音を唸らせ、鍛冶妹の横を通り過ぎる

鍛冶妹「な、何!?って、きゃぁぁ!?」

さらに補給トラック、武器トラックと続き、最後にジープが側を通り過ぎた

支援A「はぁぁ〜お前〜俺のカレ〜パン〜返せよ〜!」

そして最後に妙な歌のような物が聞こえ去った

鍛冶妹「…な…なんだったのー?」

鍛冶妹は集めた薬草を地面にばら撒き、しばらくボーゼンと立ち尽くしていた


支援A「うるせ〜よ〜てめぇ〜月に〜帰れよ〜!」

隊員C「うるせぇのはおめぇだよ、支援A!こっから放り出されてぇのか!?」

耳を塞ぎながら文句を言う隊員C

支援A「いいじゃねぇか、天気も景色も最高なんだぜ?絶好の喉自慢日和だ!」

隊員D「歌詞がゴミ溜めのゲロレベルだけどな…」

衛生「…それより今、誰かいませんでした?」

隊員D「いたか?」

自衛「いたぜ、鳩が豆鉄砲食らったような顔してたぞ。」

隊員D「しょうがねぇや、車列に支援Aの騒音公害のおまけつきだからな。」

補給『ザザ…こちら指揮車、後方警戒車応答せよ。』

自衛「へい、こちら後方警戒車。」

補給『そっちは特に異常ないか?』

自衛「今、人がいましたがそれ以外は何も。」

補給「旅人かなんかか?」

自衛「おそらくは。それより、このままこの道を進み続けると
    国境の町のほうにいっちまいますよ?」

補給『分かってる。地図にはないが、1km先に小道が分岐してるからそっちを進む。
    各車には伝達済みだ、間違えんなよ。』

自衛「了解、切ります…っつーことだ、衛生。」

衛生「分かりました。」

支援A「なんだと〜そんなお前の〜ほくろがワイわ〜大好きやねん〜!」

自衛「…支援A、黙ってろ。」

支援A「マジかよ!?」


北の砦 天幕内

37隊長「もともとは第一騎士団がここを固めていたのですが…
     現在、第一騎士団各隊は横隊で展開。突入の準備を進めています。」

37参謀「我々、37騎士隊は2隊をさらに四つに分け、第一騎士団の後方を固めています。」

隊員E「第一騎士団の隊列配置は?」

37参謀「彼らはまず、重装歩兵を前方に三部隊並べています。
     その後ろに騎兵隊を一体、軽装兵二隊、最後尾に支援魔法の魔法隊が一隊。」

37隊長「砦は城壁に囲まれ、内部に砦そのものがある構造になっています。
     まず重装歩兵が城門を開き、騎兵が城壁内部に突入、城壁の内側を制圧します。
     それに軽装兵と魔法隊が続き、砦そのものを制圧。
     彼らはこういった方法を考えているようです。」

隊員E「数は?」

37参謀「半数以上は重装兵に振られています、およそ150名。
     騎兵が50に、軽装兵90、魔法を使える者は10名程度です。」

隊員E「合計300?聞いた話では500名ほどがいると。」

37隊長「内150は我々37騎士隊です。残り50名は後方要員ですので。」

隊員E「そういうことですか。」

37隊長「本来は増援の第33騎士隊の到着を待ってから突入する手はずだったのですが…」

五森騎士「増援など必要ない、我々第一騎士団だけで十分だ!」

37隊長「!」

隊員E「?」

いつの間にか天幕の入り口に、一人の女性が立っていた

隊員E「失礼だが、あなたは?」

五森騎士「第一騎士団、騎兵隊隊長の五森騎士だ!どこの者とも知らない
連中の助けなどいらん!
      今回の問題は我々だけで解決してみせる!」

37隊長「お、おい!五森騎士!」

五森騎士「ふん!」

五森騎士はそれだけいうと、その場から立ち去った

隊員E「これはまた、嫌われたもんだな。」

37隊長「申し訳ない…!どうにも第一騎士団はあなた方の介入を
よく思っていないようで…なんとお詫びしていいか…」

隊員E「仕方がありません、よそ者をよく思わないのは当然のことです。」

37隊長「ですが、東の街を救って下さったのはあなた方と聞いています…
     我々にはその恩がある!」

隊員E「我々は自分達の身の安全のために動いたに過ぎません、どうかお気になさらず。
    しかし…そうなると我々はどうにも出番がなさそうですね…」

隊員A「でも、何があるかはわかりません。戦闘が終わるまで待機しておくべきでしょう。」

37隊長「私からもお願いします。第一騎士団は皆、躍起になっています。
     考えたくはありませんが、万が一のことが起こりえないとも限りません。」

隊員E「わかりました、我々は戦闘準備を整え待機します。」


隊員E「と、いうわけだ。我々は戦闘終了まで、不足の事態に備えここで待機する。」

隊員Eは一度隊員達を集め、天幕での出来事を説明した

支援B「なんだそりゃ。」

偵察「燃料の無駄もいいとこだぜ…」

隊員A「そこ、うるさいぞ!静かに聞け!」

偵察「いっ…!」

隊員E「そう目くじら立てるな隊員A、皆の言いたいこともわかる。」

隊員A「しかし…」

隊員E「一組を選抜し砦の監視を行う、残りは簡易陣地を構築だ。
    それと、各自装備の点検を怠らないように。隊員G三曹、陣地構築の指揮を任せる。」

隊員G「わかりました。」

隊員E「よし、各員かかれ。」


陣地構築にかかる派遣小隊

同僚「まさかここまで来て待機することになるとは…」

隊員B「まぁ、出番がないんじゃしょうがないですよね。」

支援B「いいんゃねぇか?連中が助けはいらないって言ったんだ。
    これで、前払いの食料はもらえてんだ、おいしい話だと思おうぜ。」

同僚「そうであればいいが…」

同僚「…?」

同僚は、離れた所からこちらを見る人影に気付く

37隊兵A「わ、気付かれた。」

37本部書記「あたりまえでしょ!こんな所でじっと見てれば!」

同僚「君達、何か用かい?」

同僚は二人へと近付く

37本部書記「あ、いえ、その…そういうわけでは…すみません…」

同僚「君達もここの兵士なのか?」

37隊兵A「はい、37騎士隊所属、37隊兵Aです。」

37本部書記「37騎士隊、本部付きの37本部書記です…」

同僚「私は同僚陸士長だ。しかし、君達ずいぶん若く見えるが…?」

37隊兵A「そうっすか?俺もこいつももう15歳ですけど?」

同僚「15!?」

同僚は驚きの声を上げる

37本部書記「ひえ!…ど、どうしたんですか…?」

同僚「ご、ごめん…しかし15で戦いに…」

隊員E「別に驚くことじゃないだろう。」

同僚「二曹…!」

脇から隊員Eが会話に割り込む

隊員E「中世の時代には、それくらいの年齢で兵士になるのが当たり前だったそうだ。
    こっちの世界でも同じなんだろう。」

同僚「まぁ、確かに…」

隊員E「ところで君達、ずいぶん軽装だな。第一騎士団は軽装兵でもちゃんと甲冑を纏っていたが?」

隊員Eの言うように、37隊兵A達の身なりは武器と簡単な防具をつけている以外は、
町の住民の服装とほとんど変わらない

37隊兵A「そりゃあ、第一騎士団は正規の騎士隊ですからね。」

同僚「君達は違うのか?」

37本部書記「はい、私達は元々木洩れ日の街の自警部隊だったんですけど…
       対魔王戦線への出兵で国内の防備が薄くならないように、
臨時騎士隊として編成されたんです。」

37隊兵A「隊長や参謀は元々ちゃんとした騎士ですけど、
     俺達は好き好んで集まった、ただの街人なんすよ。」

隊員E「そういうことか。騎士団の人達と、37隊の君らで
雰囲気が違うのにも納得がいった。」

37隊兵A「でしょ?俺達はただのペーペーですから。」

隊員E「そうじゃない、君達の方が人当たりが良いと言いたかったんだ。
    どうにも第一騎士団の人々は我々に良い印象を持っていないようでな…」

37隊兵A「そ、そうっすか?」

37本部書記「わ、私達は感謝してるんですよ!
       東の街には家族や親戚がいる人も多いんです、
それを助けてもらったんですから!」

隊員E「ああ、君達の隊長からもお礼を言われたよ。
だが、隊長にも言ったが我々は自分の身を守ったに過ぎない。
     気にしないでくれ。」

37本部書記「で、でも…」

37副隊長「隊兵A、書記!第一騎士団が突入体勢に入ったぞ、お前らも配置につけ!」

37隊兵A「は、はい!」

37本部書記「すみません、失礼します!」

同僚「あ、ああ。」

二人は配置へ戻るため走り去った


昼過ぎ

隊員G「砦までの遮蔽物が何もねぇな…」

隊員G達は観測用の壕を掘り、その中から一帯を見回す

偵察「連中はこの中を突っ込む気か?」

隊員G「まぁ、それしかないだろうな。」

偵察「せめて迫撃砲で事前砲撃くらいしてやらないんですか?」

隊員G「本来ならそうすべきなんだろうが…あちらさん、
    俺達に手出しされたくないらしいからよ。」

偵察「面倒だなおい…」

隊員F「………」

第一騎士団は整列を完了、突入の準備に入っていた

騎士団長「皆聞け!砦に立て籠もるのはわが国の恥さらしだ!
     これより我々は砦に切り込み、奴らを一掃する!
     我々の手で、奴らに天誅を下すのだ!!」

騎士団「「「オォォーーー!!!!!!」」」

ビリビリ

隊員G「うぉ…!」

偵察「まさに騎士団って感じだな。」

隊員F(なーにが"オー"だ、気色悪い………)


騎士団長「重装歩兵、全隊前へー!!」

隊長A「第1隊、前進!!」

掛け声と共に重装歩兵隊が前進を始める

隊員G「おい見てみろ、砦の城壁の上。」

偵察「…弓兵が出てきたぞ。」

城壁に敵の弓兵が整列し、弓を構えている

偵察「放ったぞ!」

放たれた無数の矢が、重装歩兵隊に降り注ぐ

隊長A「怯むな!この程度では我らが引くと思うのか!!」

さらに次の矢の雨が重装歩兵を襲う、しかし彼らは怯むことなく前進する

隊長B「勇気ある重装歩兵達を援護せよ!弓兵隊、放てー!」

騎士団の弓兵隊が城門に向けて矢を放つ
放たれた矢は城門へ降り注ぎ、敵の弓兵達を貫いた
やがて、重装歩兵隊は城壁の門へと到着する

隊長A「門を開けろ!道を切り開け!」

重装歩兵達が門へ何度も体当たりを行い、やがて城門は開かれた

五森騎士「道は切り開かれた!騎兵隊よ、私に続け!」

五森騎士率いる騎兵隊が、城門内側の広場へと突入する

砦兵A「くそ、来たぞ!」

砦兵B「戦え!戦うんだ!」

突入した騎兵隊と砦の兵達との間で戦いが始まる

五森騎士「はぁぁ!」ヒュッ

砦兵A「ぐぁ!」バシュッ

五森騎士は馬上から敵をなぎ払う

砦兵B「くそっ!やぁぁ!」

五森騎士「甘い!」キンッ

砦兵B「なっ…がぁ!?」ドシュッ

騎兵隊は次々と砦の兵達を打ち倒してゆく
門からは軽装兵と魔法兵が騎兵に続いて突入し、城壁内の砦へと突入してゆく

五森騎士「ふっ!」

砦兵C「ぎゃぁ!」ブシュッ

五森騎士は周辺にいた敵兵をすべてなぎ払った

騎士団長「五森騎士!」

五森騎士の所へ騎士団長の乗った近付く

騎士団長「順調のようだな、軽装兵隊が砦を制圧中だ。お前達は谷側の門を抑えてくれ。」

五森騎士「は!騎士隊続け!」

五森騎士は騎兵隊を引き連れ、谷側の門へと向かった


砦内部

砦兵E「ぐぁぁ!」ブシュッ

敵兵士が軽装兵により切り倒される
砦内部もすでに制圧されつつあった

官僚「ば、馬鹿な…!」

軽装隊長「大人しくしろ、我が国の恥さらし共!
貴様らに勝機など元々有りはしなかったのだ!」

官僚「く…!」

軽装隊長「こやつを捕えて、部屋の中を調べろ。」

軽装兵A「…ん、なんだ?」

軽装兵B「どうした?」

軽装兵A「いや…なんか音がしないか?」

軽装兵は近くの窓から外を覗く

軽装隊長「おい、何をしている!お前も手伝え!」

軽装兵A「…た、隊長…!」

窓を覗いていた軽装兵Aは、震えながら窓の先を指差した

軽装隊長「一体なん…な!あ、あれは!?」

彼らの目に映ったのは、谷側から迫る騎兵の軍勢だった


砦の広場

谷側に回った五森騎士達の目にも、迫り来る軍勢が映っていた

五森騎士「…ば、馬鹿な…」

騎兵A「た、隊長、あれは味方ではありません!」

五森騎士「そんなもの見ればわかる!くそ…奴等これを待っていたのか!」

騎兵B「あ、あんなにたくさん…」

五森騎士「うろたえるな馬鹿者!おい!敵はどのくらい見える!?」

五森騎士は城壁の上に上がった弓兵に問いかける

弓兵A「ここから見える限りでは、騎兵およそ100!歩兵200!他にも…ぐが!?」

伝え終える前に、敵の矢が弓兵Aを襲った

五森騎士「くそ!」

騎兵A「隊長、このままでは!」

五森騎士「落ち着け!この砦の用途を忘れたか!重装歩兵隊が展開すれば
      抑えられない数ではない!それまで時間を稼ぐぞ!」


派遣小隊 監視壕

隊員G「…なんか砦からの喧騒が大きくなってねぇか?」

偵察「一度は収まったと思ったんですが…」

隊員E「どうした?」

隊員G「二曹、どうにも砦の様子が妙です。一度ドンパチが収まったはずなのに、
    先程からまた喧騒が。」

偵察「あ、あれを。」

砦から一騎の騎兵がこちらへと走ってくる
騎兵は37隊の陣へ駆け込んだかと思えば、馬上の兵はそのまま地面に倒れ落ちた

隊員E「…何かあったな。隊員G、分隊ごとに整列して待機を。」

隊員G「了解。」


37隊陣地

37隊兵B「そっち抑えろ、血を止めるんだ!」

37隊の兵士達は、駆け込んできた騎兵の手当てに追われていた

37隊長「おい、しっかりしろ!何があった。」

騎兵C「ぐ…と、砦に…」

その場に隊員E達が近付く

隊員E「こいつは酷い。衛隊A、手伝ってやれ。」

衛隊A「了解!」

隊員E「一体何があったんです?」

37隊長「わかりません…おい、砦で何があったんだ!?」

騎兵C「と…砦…敵の援軍が…500以上…」

37隊長「な、なんだと!?」

隊員E「援軍?」

騎兵C「すでに仲間の半数近くが…重装歩兵隊が抑えているが…長くは持たない…」

衛隊A「これ以上しゃべっちゃダメだ!この人を手当のできる所へ!」

37隊兵B「分かった、布をもってこい!こいつを奥へ運ぶ!」

騎兵Cは奥の天幕へと運ばれていった

37隊長「クソ!なんてこった…!」

隊員E「篭城をしていたのはこれを待っていたからか…
    ただの悪あがきじゃなかったって事だな。」

37副隊長「隊長、すぐに救援に向かうべきです!」

37隊長「落ち着け!聞いただろう、砦内は制圧されかかってる。
     今ヘタに飛び込めば、最悪、連中も俺達もそろって全滅だ…」

37副隊長「しかし!」

37隊長「敵の数も聞いただろう!?砦が制圧されれば奴等は打って出てくる!
     ここで俺達が時間を稼がなきゃ、次に襲われるのは木洩れ日の街だ…」

37副隊長「…」

37隊長「33騎士隊に伝令を出せ!緊急事態発生、行軍速度を上げられたし、とな。
     各隊は防戦に備えろ。参謀、何人か選抜して斥候を出せ!」

37参謀「は!」

37隊長「…くそ…」

37隊長は頭をかかえる

隊員E「あの、少しよろしいか?」

37隊長「はい?」

隊員E「よろしければ、砦への救援には我々が向かいましょう。」


数分後

ブロロロロロ…

新小型トラック一両とトラック二両がエンジンを吹かす

隊員E「全員聞こえてるか?もう一度確認するぞ。
    南門付近はまだ重装歩兵隊が押さえているらしいが、油断はするな。
    突入したらトラックを盾に展開、広場を安全化する。
    安全化後、第二分隊一組は城壁を確保、二組は城門付近を固守。」

隊員G『第二分隊了解。』

隊員E「第一分隊は、砦内へ突入だ。」

隊員A『第一分隊了解。』

隊員E「…1250時、派遣小隊出撃。」

出撃の合図と共に、先導のジープが発進
トラックがそれに続く


砦内 谷側の門付近

五森騎士「やぁぁ!」ザンッ

敵兵A「ぎゃ!」ブシュッ

何人目かの敵を切り倒す五森騎士

騎兵A「くそ、多すぎる!」

五森騎士「馬鹿者!弱音を吐くな!」

五森騎士達の周りは完全に敵の集団に囲まれていた
彼女達は、重装歩兵隊が防御隊形を整えるまでの時間を稼ぐため、敵中に残ったのだ

敵兵B「でやぁぁ!」

五森騎士「甘い!」シュッ

敵兵B「ぐわぁ!」バシュッ

敵兵C「くそ!こいつら手練れだぞ!」

敵側はすでに数十名の死傷者を出しており、敵兵達は怯み始める

五森騎士(よし、敵は怯み出したな…これならば…)

?「ほう、これだけの数を相手に立ち回るとは、さすがは近衛部隊といったところか。」

五森騎士「!」

五森騎士達を囲っていた敵兵が割れたかと思うと、敵の将らしき人物がそこから現れた

敵将軍「しかしまぁ、ずいぶんとたくさん伸してくれたもんだ。」

五森騎士「貴様がこの軍勢の大将か!?」

敵将軍「そんな大層なもんじゃないが、一応こいつらの頭だ。」

五森騎士「ふふ…ならばノコノコ出てきたことを悔いるがいい、その首もらい受ける!」

五森騎士は地面を蹴り、敵将軍に切りかかろうとする

敵将軍「おっとお、大人しくしたほうがいいと思うぜ?こいつらの為にもな。」

敵将軍は一歩下がると、後ろを示して見せる

五森騎士「!?」

五森騎士は飛びかかろうとしていた体を止めた

魔法兵A「騎兵隊長!すみません…!」

魔法兵B「やだ!放して!」

後ろには敵兵に捕まえられた、魔法隊の兵士達の姿があったからだ

五森騎士「な!魔法隊の…この卑怯者!」

敵将軍「基礎だよ、戦いの基礎。捕虜はこいつらだけじゃない、
砦の中もほとんど制圧済みだぜ。
     聡明な隊長さんならどうすればいいか分かるよな?」

五森騎士「ッ…皆武器を捨てろ…」

騎兵A「そんな…!」

五森騎士「早く!」

騎兵B「…くそ!」

五森騎士たちは武器を捨て、投降した

敵将軍「捕まえろ。」

敵兵C「オラ、来い!」ドン

五森騎士「ぐっ!」

五森騎士達は捕らえられ、砦へと連れて行かれる

敵将軍「やれやれ、向こう側の門はどうなってる?」

敵兵D「敵の重装騎兵が抵抗していますが、まもなく砦を完全に再制圧できるでしょう。」

敵将軍「無駄なことを…3隊を増援に回せ。第二派の連中が来るまでにここを
     抑えないとな。」


第一騎士団は南側の門の直前まで押し返されていた

重装歩兵A「敵が多すぎる!」ガキィン

重装隊長「踏ん張れ!ここを突破されれば国内に侵攻されるぞ!」

重装歩兵A「しかし…ぐぁぁ!?」ドスッ

重装隊長「おい!くそ…隙を作るな!」

重装歩兵B「ダメです、押し込まれます!」

重装歩兵隊の防御は今にも崩れようとしていた

ブォォォォ!

重装歩兵B「な、何だ!?」

音と共にジープが
そしてトラック二両が城壁内に走りこんで来る

重装隊長「あれは…!」

隊員E「まだ持ってるな、各隊降車!迅速に展開、急げ!」

降車した隊員は車両を中心に展開して行く

偵察「すげぇ…まるで映画の中だぜ…!」

隊員H「うっはっは!こりゃ、どえらい事になってんな!」

巻き起こる戦闘の様子に、隊員達は驚きの声を上げる

隊員H「二曹、もうぶっ放してもいいんですか!?」

隊員E「馬鹿、少し待て。今撃ったら第一騎士団の兵達に当たるぞ。
    てき弾用意!準備の完了した者から撃て!」

同僚達数名の隊員がてき弾の発射体制に入る

同僚「てき弾いくぞー!」

ドシュ、ドシュ!

高い角度で撃ちだされたてき弾はやがて弧を描き落下
第一騎士団の隊列を通り越え、敵の頭上へと着弾した

ズガーン!ズオーン!

敵兵E「うぎゃぁぁぁ!?」

敵兵F「な、なんだぁぁ!?」

敵集団のやや後方で爆炎が上がる

偵察「おらよ!」

支援B「吹き飛びやがれ!」

偵察達が手榴弾を投てき

ボッガァーン!

敵兵F「ぎゃぁぁぁ!」

手榴弾はてき弾よりも近い場所で爆発した
敵集団の勢いが少し弱まる

重装隊長「これは…」

隊員E「失礼!ここの指揮官はどなたか?」

隊員Eは重装歩兵隊の隊列へ近付き、指揮官を探す

重装隊長「わ、私だ!今のは一体…?」

隊員E「説明は後で。今から敵兵を掃射します、隊列の一部を開けてもらえませんか。」

重装隊長「な、何を言っておられる!?この状況で隊列を開けるなど…!」

隊員E「驚かれるのも無理はありません、しかしこのままでは犠牲が増えます!
    開いた箇所から雪崩れ込んだ敵は我々が一掃します。」

重装隊長「…だが」

隊員E「信じてください、この国を守りたいのは我々も一緒です。」

隊長A「…わかりました、やりましょう!」

隊員E「ありがとうございます。」

隊員Eは車列へと戻る

隊員H「なかなか演技派じゃないですか、二曹。」

隊員E「うるさい、それより準備をしろ。ジープを隊列の後ろへ。」

隊員H「了解。」


数分後

隊長A「まだだぞ…よし、今だ!」

合図と共に重装歩兵隊の一部が後退、隊列に穴が開く

そこから敵重装歩兵が一斉に雪崩れ込もうとする

隊員H「待ってたぜー!ハッハーー!!!」

ジープ上の隊員Hは、掛け声と共に敵重装歩兵に向けて引き金を引いた

ドドドドドドドド!!!

敵兵G「うぎゃっ!」

敵兵H「ひぎ!?」

雪崩れ込もうとした敵は弾幕に晒され、次々と倒れていく

隊員H「ハッハッハーー!!!」

隊員Hは敵集団に向けて撃ちまくる

隊員E「一人も入れるなよ!」

隊員B「分かってます!」ボウ

軽機の弾を逃れた敵兵は、他の隊員が小銃で仕留めてゆく

偵察「手榴弾もっぺん行くぞ!」

再び手榴弾が投てきされ、後続の敵が吹き飛ぶ

偵察「しかし、なんつー数だよ…」

ザクッ!

偵察「おわっ!?」

突如、偵察の足元に矢が突き刺さった

偵察「危ねぇなくそ!」

同僚「馬鹿!隠れろ!」

同僚は偵察を引っ張り、トラックの影に隠れる

同僚「見てみろ、城壁の上!」

同僚が示した先、城壁の上に敵の弓兵が見えた

偵察「糞が、あんな所にから撃ってきやがって!」

同僚「私達が言えた義理じゃないだろ…ちょっと待ってろ。」

同僚は小銃に新しいてき弾を付け、構える

同僚「当たれよ…!」

ドシュッ
ボガーン!

てき弾が命中し、敵の弓兵が城壁の一角ごと吹き飛んだ

偵察「やるじゃねぇか。」

同僚「これくらいならな…二曹、城壁上にも敵を確認!」

隊員E「分かった。こっち(広場)はそろそろ落ち着いてきたか…
    隊員G、一組連れて城壁上を確保しに行くんだ!」

隊員G「了解、第二分隊一組行くぞ!」

隊員G指揮する一組(7名)が城壁へ向かう

隊員A「二曹、彼らが前進します。」

敵の勢いが弱まり、重装歩兵隊は隊列を組みなおし
押し返しの体勢に入っていた

重装隊長「奴等を踏み入らせるな!重装歩兵隊、進めー!」

重装歩兵隊は前進を開始、幾度も矛先を交えながら敵兵を押し戻してゆく

隊員H「すげぇ迫力だぜ…」

隊員E「隊員H、第二分隊二組とジープを連れて、
    隊列についていけ。彼らを支援するんだ。」

隊員H「分かりました。輸送C、連中にくっついてくぞ!」

輸送C「了解!」

第二分隊二組とジープは重装歩兵隊を追いかける

隊員E「第一分隊、砦に入るぞ。室内戦の準備をしろ!」


第二分隊一組は城門脇の階段から城壁上に上がる

武器A「うぇ、上がって見ると高ぇな…」

隊員G「余所見してんな、そこに軽機を設置しろ。」

武器A「ったく…なんで俺等まで普通科まがいのことをしなくちゃならねぇんだ…」

文句を言いながら、武器Aは近くの木箱の上にMINIMIを設置する

隊員G「普通科が圧倒的に足りてねぇんだから、しょうがねぇだろ。
    それに、普段からばらし組み立てを繰り返してんだから、銃の扱いは得意だろ?」

武器A「お前ら程じゃねぇよ。」

武器B「三曹、前から来ます!」

城壁の先から敵兵がわらわらと現れる
谷側の門から上がり、回ってきたのだろう
ほとんどは弓兵だが、先頭には軽装兵らしき者が数人確認できる

武器A「多すぎじゃね…?」

隊員G「落ち着け。まだだ、引き付けろ…」

隊員Gは手の平で組員を制する
軽装兵達は剣を抜き、こちらへ迫ろうと駆け出していた

隊員G「…よし、撃て!」

合図と共に発砲が始まった

ダダダダダ!

小銃の発砲で軽装兵達は倒れ、何人かは城壁上から落下してゆく

武器A「クソッタレー!!!」

ドドドドドドドド!

武器Aはその後ろの敵弓兵隊に無我夢中で弾を撃ち込み続ける
こちらに向けて射ろうとしていた弓兵達は次々と倒れていった

武器A「だらあああああ!!!」

隊員G「武器A、もういい!撃ち方やめだ!」

隊員Gの怒鳴り声で武器Aはようやく引き金から指を離した

武器A「糞が…!」

隊員G「城壁上を占拠して下の部隊を援護するんだ、行くぞ!」

二分隊一組は城壁上を進みだす

武器A「………」

武器Aは進もうとした足を止め、足元に転がる死体を見た

武器A「…夢に出るぜ絶対…」

呟くと、武器Aは隊員G達の後を追った


砦の入り口

第一分隊は砦の入り口両脇に配置している

隊員E「準備できたか?接近戦は敵のほうが得意だからな。決して油断するな!
    施設C一士、爆薬を。」

施設Cが砦の大きな扉に爆薬を仕掛ける

施設C「爆発に備えてください!」

隊員E「全員備えろ…起爆だ!」

施設Cが起爆スイッチを押し、爆薬が起爆
ドアが粉みじんに吹き飛んだ

隊員E「行け行け行け行け!」

ドアが吹き飛ぶと同時に、同僚を含む四名が内部へ先行して突入
内部では敵重装兵と弓兵が二段構えで待ち構えていたようだったが
爆発に巻き込まれ、最前列の兵士は血を流して横たわっていた
生きている兵士も難聴を起こしたり、大きく咳き込んでいる

同僚「無力化しろ、撃て撃て!」

ダダダダダ!
ボウ!ボウ!

爆発に混乱しながらも、応戦しようとする敵兵を無力化してゆく

偵察「奥にもう一塊いるぞ!」

通路の先にはもう一隊、同じ構成の敵防衛部隊がいた

敵重装兵A「押し返せ!」

掛け声と共に、横隊を組んだ敵重装兵第二陣が押し進んでくる

同僚「接近させるな!」

同僚たちは近くの遮蔽物に身を隠し、敵重装兵を迎え撃つ

ドドド!
ボウ!

敵重装兵B「ぐぅ…!」

敵重装兵A「怯むな、進め、進むんだ!」

敵重装兵達は臆さずに前進して来る

偵察「マジかよ、おい!」

重装兵の装甲は厚く、5.56mm弾数発や散弾では致命傷を与えられていなかった

同僚「ダメージは通ってるはずだ、撃ち続けるんだ!」

そこに後続で突入した隊員E達が到着する

隊員E「どうした!?」

同僚「敵の装甲が厚くて、小銃弾数発では致命傷を与えられません!
    軽機の支援を!」

隊員E「支援B、MINIMIを!」

支援B「了解!」

支援BがMINIMIを構え、敵に向けて発砲を開始

ドドドドドドド!

敵重装兵A「ぐ!?」

敵重装兵B「うぁ!」

敵重装兵C「いっ!?ぐはっ…!」

弾幕により敵重装兵が次々と倒れていく
しかし、その奥からさらに別の重装兵が迫る

支援B「また来るぜ!」

同僚「第三陣か…!」

隊員E「弾幕を絶やすな、火力を集中しろ!」

迫る敵重装兵隊に砲火を浴びせ続ける

ドドドドド!
ボウ!ボウ!ボウ!

敵重装兵D「ぐ…がぁ…!」ドサリ

二度に渡る敵の突撃
そして迎撃により、通路には敵の死体が溢れかえった

隊員E「今ので最後か…二組、前方に出て警戒。
    その間に一組は弾薬を再装填しろ。」

偵察「多数相手なら散弾が有効だと思ったんだけどな…」

愚痴をこぼしながら偵察は、ショットガンに詰めた散弾を
村娘の故郷でも使っていたスラッグ弾に交換していた

同僚「…二曹、室内で敵の装甲兵と戦うには、小銃では不利かと思われます。」

隊員E「そうだな…だが、ショットガンは全員に行き渡る数は無いぞ…」

同僚「せめて前後を守る隊員にはショットガンを持たせましょう。
    鉢合わせさえしなければ、ショットガン以外でも対処は可能です。」

隊員E「分かった、そうしよう…全員装填は終わったか?」

偵察「完了しました。」

支援B「問題無し。」

隊員E「一階の安全化し、上階への階段を探す。行くぞ。」


ボウ!

敵重装兵E「ぐぉぉ…」

スラッグ弾の直撃を受け、敵の重装兵がまた一人倒れる

その先には上階への階段があった

偵察「あったな。」

隊員E「ここから上がれるか?偵察士長、何人か連れて先行しろ。」

偵察「了解。隊員B、施設C、支援B、俺と…」

言いながら階段を上ろうとした時

偵察の目の前を、ヒュッ、と何かが横切る

偵察それが何かを確認する間もなく、その何かが大量にその場へと降り注いだ

バヒュバヒュバヒュ!

隊員B「隠れろ!」

施設C「何だ!?」

偵察たちは大慌てて階段元から離れ、階段脇へと隠れる

ドスッ!

偵察「痛ッ!?」

支援B「なんなんだ畜生!」

同僚「おい偵察、大丈夫か!?」

なんとか遮蔽物に逃げ込んだものの、偵察のわき腹には何かの切り傷があった

偵察「痛ってぇ、なんだってんだ…!」

隊員E「衛隊A!」

衛隊A「分かってます!」

衛隊Aが偵察の傷の手当にかかる

隊員E「何が起こったんだ?」

同僚「二曹、あれを。」

同僚が何らかの物体が降り注いだ、階段の先を示す

階段先の床や壁には大量のツララのような物が突き刺さっていた

隊員E「なんでこんな物が…?」

隊員B「分かりません、階段の先から急に…」

シュンシュンシュン!

隊員B「ひぇ…!」

階段先を覗こうと、ほんのわずかに顔を出した瞬間、再びツララが降り注ぐ

隊員B「これじゃ何もわかりませんよ!」

隊員E「誰か、トラックからバックミラーを持って来い。」

隊員A「行って来ます!」

隊員E「護衛に何人か連れてけよ!…偵察の傷はどうだ?」

衛隊A「わき腹を掠ってますが、深い傷ではありません。」

偵察「痛ー…同僚、これたぶん魔法だぜ。」

同僚「ああ…」

同僚は地面に刺さらず、足元に転がってきたツララを拾う

同僚「…冷たい、これは氷だ。」

偵察「今度は氷の魔法かよ、退屈しないぜホント…。」

やがて隊員A達が戻ってくる

隊員A「どうぞ。」

隊員E「ありがとう。衛隊A、テープをくれ。」

隊員Eは、バックミラーを銃剣の先にテープで固定した

支援B「ここはノルマンディーかよ…」

隊員E「黙ってろ。」

隊員Eはバックミラーつき銃剣を壁から覗かせる

隊員E「あれは…?」

階段の先にはバリケードに身を隠した敵兵士と、軽装の女性らしき姿がいた
その女性が片手を振り上げ、口を動かす
次の瞬間、彼女の頭上に無数のツララが現れ、こちらに向かって飛び掛る

シュンシュンシュン!

隊員E「うぉ!」

支援B「危な!」

ツララは反対側の壁へと突き刺さってゆく

そのうちの一本がバックミラーへ命中し、鏡にヒビを入れていた

隊員E「…」

隊員Eはバックミラーを銃剣からはがし、両方をしまう

隊員B「てき弾ぶっこんでやる!」

隊員Bがてき弾を装着した小銃を遮蔽物から覗かせようとする
次の瞬間、再びツララの嵐が降り注いだ

隊員B「痛ッ!」

隊員Bはツララで軽く手の切った

同僚「大丈夫か?しかし…完全に後手に回ったな。」

支援B「撃ちまくって、押し切っちまえばいいじゃねぇか?」

同僚「危険すぎる。階段前は何も隠れるものが無い。
   それに押し切ったとして、奥にも同じ魔法を使うような奴がいたら
   終わりだぞ。」

支援B「めんどくせぇ…」

隊員E「なんとか回りこめるルートを探す、数名俺と来い。隊員A三曹、ここを任せるぞ。」


上階へのルートを探しに出た、隊員E率いる組は一度砦の外へと出ていた
壁伝いにどこか入れる所がないかを調べている

施設C「二曹、あれを。」

施設Cが壁の上のほうを示す

おそらく二階であろう高さに位置する所に、小さな窓がいくつか並んでいた

隊員E「弓兵用の小窓か…」

施設C「今は弓兵自体は配備されてないみたいです。」

隊員E「あそこから入れるか…俺が上がる、隊員I、ブーストしてくれ。
    他は付近を警戒!」

隊員I「了解。」

隊員Iは小窓の真下で屈み、両手をレシーブを打つときのように重ねる

隊員E「行くぞ!」

隊員Eは勢いをつけながら隊員Iの手のひらに足をかける
それと同時に隊員Iは両手を真上へと振り上げた

隊員E「よっ!」

隊員Eはその勢いで跳躍し、小窓の端をつかむ

隊員E「よし!届いた!」

壁に足を掛けてよじ登り、窓から砦内部を除く

隊員E「ここは廊下か…誰もいないようだな。」

隊員Eは下に向けて手招きをしてから中へ入った

隊員E「っと…」チャキ

床に足をつけると共に、小銃を構え周囲を警戒する

ダッ!

窓の外で物音がしたかと思うと、隊員Fが続いて入って来た

隊員F(ったく、こういう事はレンジャーの仕事だろうが…)

隊員E「隊員F、反対側を見張れ。」

隊員F「分かってます。」

廊下の反対側に銃口を向ける隊員F

施設C「よっと!」ガシッ

さらに続いて施設Cが窓をくぐり、
最後に上がってくる隊員Iのために手を伸ばしている

施設C「誰もいねぇようですね。」

隊員E「油断するな…待て!」

コツコツ…

廊下の先の曲がり角から、足音が聞こえる
そして敵兵が数名姿を現した

敵軽装兵A「な!し、侵入者!?」

隊員E「隊員F、撃て!」

隊員F「最悪だ!」

ドドド!

敵軽装兵A「ぎゃぁ!」ドシュ

銃弾が命中し、一人の敵兵が倒れる

隊員F「施設C!早く隊員I三曹を引き上げろ!」

施設C「分−ってるよ!」

施設Cは身を乗り出し、隊員Iを引き上げている

敵軽装兵B「くそっ!」ダッ

他の敵兵達が抜剣し、こちらへと走り出す

隊員E「撃て!」

ドン!

敵軽装兵B「ひがっ!?」ブシュ

ドドド!

敵軽装兵C「ぎゃ!?」バシュッ

隊員F「来んな、ボケ!」ドドド

銃撃により敵兵達は全員倒れ、彼らの血が床に転がった

隊員E「片付いたか。」

隊員Eが呟く一方で、施設Cが隊員Iを中へと引き込む

隊員I「っと…ありゃ、終わってる。」

隊員E「まだ他にもいるだろう、油断はできん。行くぞ。」


四人は廊下を進む

隊員E「待て。」

曲がり角に差し掛かった所で隊員Eは制止をかけた

隊員E「確認する。施設C、後ろを見張ってろ。」

施設C「了解。」

隊員Eは曲がり角の先を慎重に除く

隊員E「…あったぞ、階段だ。」

覗いた先には、一階に通じているであろう階段があった
辺りには敵兵数名、武器や物資が置かれている

隊員E「隊員A、応答しろ。こちら隊員E。」

隊員A『こちら一階、隊員Aです。』

隊員E「二階に上がり階段を発見した。おそらく位置的にそっちの真上だ。
    確認のために、敵に魔法を撃たせてくれ。」

隊員A『分かりました。』

数刻置いて、階段の先からガラスの散らばるような音が聞こえてきた。

隊員E「…間違いない、これより階段の上から攻撃する。下から支援を頼む。」

隊員A『了解、気をつけて下さい。』

隊員E「よーし、階段付近を押さえるぞ。備えろ。」

隊員Eはフラッシュ弾のピンを抜き、曲がり角の先へ転がす

ボッガァァァァ!

隊員E「行け行け行け!」

爆音が鳴り響くと同時に、隊員Iを先頭に突入してゆく

敵軽装兵C「あああ…!」

敵弓兵A「な、なにがぁ…」

突入した先では、フラッシュの直撃を受けた敵兵たちが
よろめきながら歩き回っていた

隊員I「…」

ドンドン!

敵軽装兵C「ぐぁ!?」バシュッ

敵弓兵A「が!?」ドシュ

フラッシュ弾により感覚を失った敵を撃ち殺してゆく

隊員I「悪いな…確保しました!」

施設C「確保!」

隊員E「隊員I、施設C!そのまま見張ってろ!
    隊員F!階段下に向けて攻撃するぞ!」

階段入り口から、下の踊り場に向けて銃口を向ける

敵魔法兵「な!敵!?」

敵重装兵F「くそっ!」

踊り場にいた魔法兵達はそれに気づき、応戦しようとした
しかし、一階への注意が削がれると同時に、
一階の第一分隊が突入してくる

敵魔法兵「しまっ…!」

ドドドドド!

敵魔法兵「ぐあっ!?」ドシュ

ドン!ドン!ドン!

敵重装兵F「がぁぁ!」バシュ

上下からの挟撃を踊り場の敵兵達は防ぎきれず
銃撃により倒れていった
一階にいた隊員が階段を上がってくる

隊員E「上がったら付近を警戒しろ!」

すれ違う隊員に指示を飛ばす隊員E

隊員A「二曹、大丈夫ですか?」

隊員E「ああ、大丈夫だ…隊員A、数名をここの見張りに残せ。
    お前は一組を指揮して、二階を安全化しろ。」

隊員A「分かりました。」

隊員Eは隊員Aを見送ると、踊り場に倒れた魔法兵に目をやる
同僚が魔法兵を調べていた

偵察「こいつか、ツララを放ってきたのは?」

偵察が傷を抑えながら覗き込む

同僚「まだ子供だ…37隊にいた子達と同じくらいか…?」

魔法兵は十台半ばと思われる年齢の少女だった

偵察「…嫌な感じだぜ…」

同僚「ああ…」

同僚は魔法兵の開いたままの目を閉じる

隊員E「やな気分だな。だが、感傷に浸ってばかりもいられないぞ。
    最上階への階段を探し出して押さえるぞ、同僚、偵察、隊員F、俺と来い。」

同僚「了解!」

隊員F(かったりぃ…)

隊員E「どうした、隊員F?」

隊員F「別になんでも。」

隊員E「気を抜くな、行くぞ。」


砦の最上階の一室

敵将軍「なかなかの抵抗を見せてくれたものだ。さすがは近衛の第1騎士団といった所か?」

騎士団長「く…!」

敵将軍は皮肉めいた口調で騎士団長に話しかける
騎士団長は椅子に拘束されていた

騎士団長「貴様ら、雲翔の王国の騎士団だな!紋章を消して隠したつもりだろうが、
      その鎧には見覚えがあるぞ!」

敵将軍「ご名答、さすが騎士団長殿。」

騎士団長「なぜ貴様らが雪星瞬く公国の領土から…!一体雲翔の王国は何を
      考えている!?」

敵将軍「いずれわかる。それと勘違いなされるな、
     我々は雲翔の王国の命で動いているわけではない。
     紋章も、あのような腰抜け国家の物をつけておく趣味はないものでな。」

騎士団長「なんだと…貴様ら、騎士の身でありながら国を裏切ったというのか!?」

敵将軍「聞こえの悪いことを言ってくれるな、正しいと思う選択をしたまでだよ。」

官僚「騎士団長、よく考えろ。世界は変わりつつあるんだ…」

騎士団長「…魔王か…」ギリ

その場が一時沈黙する

五森騎士「ふざけるな!何が正しい選択だ、笑わせるな!」

唐突の叫び声は、騎士団長の隣で拘束されている五森騎士だった

五森騎士「貴様らはただ臆病風に吹かれているだけではないか!
      それを正しい選択だと?甚だおかしいわ!」

五森騎士は敵将軍を思いっきり睨みつけて言い放った

敵将軍「威勢のいいお嬢さんだ。だがな、口の利き方には気をつけたほうがいいぞ?」グッ

敵将軍は五森騎士のあごを掴む

五森騎士「くっ…!」

その時、部屋の扉が開き、敵兵が慌てて飛び込んできた

敵兵C「しょ、将軍!大変です!」

敵将軍「一体何事だ?騒々しい。」

敵兵C「て、敵の残存兵力が巻き返しを行い…我が方は北門まで押し返されています!」

官僚「な!?」

敵将軍「何!?たわけ!三個部隊も回して一体何をしている!」

敵兵C「そ、それが…敵は見たことも無い魔法を使ってきまして…」

敵将軍「なんだと…?」

敵兵C「と、とにかく来てください!」


敵将軍は部屋を出て、近くの階段から屋上に上がる
屋上からは北門周辺が一望できた

敵将軍「な、何だこれは…」

第1騎士団の倍はいたはずの敵部隊は、第1騎士団の残存兵力と同じ程度にまで減り、
北門まで押し返されていた
敵部隊は後退を続け、時折連続的に何かがはじけるような音が聞こえる
それに合わせて敵兵が倒れてゆくのが見えた

敵将軍「何だあれは!?何があったのだ!?」

敵兵C「まったくわかりません…先程から今のような音がするたびに、
    兵が倒れてゆくのです…!」

敵将軍「そんな馬鹿なことが…」

唖然とする敵将軍の下へ、別の兵士が駆け寄る

敵兵D「将軍!北の門から第二派が到着しました!」

敵将軍「何!」

見れば門の向こうの谷から、第一陣を越える数の増援が接近しつつあった

敵将軍「よぅし…!どんな手を使ったか知らんが、これで奴らも終わりだ!」


第二分隊一組は城壁上を伝って、砦の北側へと到着

武器B「城壁上、敵影ありません。」

隊員G「警戒を続行!」

武器A「見ろ、騎士の連中が奴らを押し込んでるぜ。」

城壁上からは広場での戦いがよく見えた
第一騎士団重装歩兵隊はしだいに敵兵部隊を追い込んでゆく
剣や槍が交わる金属音の中、時折、散発的に銃の発砲音が聞こえてくる

武器A「やっぱ接近戦は連中に部があるな。」

隊員G「彼らを盾に使うようで、少し気分が悪いな…」

武器A「しょうがねぇだろ、適材適所ってやつだ。」

武器B「隊員G三曹!」

隊員G「あ、どうした?」

武器B「た、谷側を見てください!」

慌てながら手招きする武器B

隊員G「どうした…げ!」

城壁の縁に駆け寄り、谷側を眺めると
目に映ったのは谷の先から迫る敵増援の大群だった

武器A「おいおい…さっきまで戦ってたのより多いぜ…」

隊員G「二組、応答しろ!こっちに向けて敵の増援の大群が迫ってる!」


地上 北門付近

隊員H「ああ、分かってるよ。こっからでもよく見える。
    アリのようにうじゃうじゃ迫ってきやがる。」

地上のジープからも、城門の向こうに迫ってくる敵の大群が見えていた

重装歩兵B「せっかく押し返したと思ったのに、まだあんなに…」

重装隊長「なんてこった…!」

騎士隊の間に動揺が広がる

隊員H「落ち付くんだ、隊長さん。」

重装隊長「何を言ってる!?落ち着けだって?君達はあれが目に入らないのか!?」

隊員H「いいから!あんたの部下に門から遠ざけてくれ。
    連中はこっちでなんとかする。」

重装隊長「なんだって…?」

隊員H「通信、第7の連中へ無線を開け。」

通信「了解。」

隊員H「隊員G!地図は持ってんな?そっから座標を教えろ。」

隊員G『わかった、少し待て…』

重装隊長「一体何をするつもりなんだ…?」

隊員H「まぁ、見てろ」

隊員G『座標確定、2_8_0だ!』

通信「了解…ソブリンズ、ソブリンズ!こちら、アルマジロ!
    砲撃支援を要請!目標座標、2_8_0、送れ!」


37隊陣地付近

120車長「派手にやってるみたいだな。」

自走迫撃砲の車長用ハッチ上から砦を眺める120車長

37隊兵A「…な、なぁ」

120車長「ん?」

車体の下から声がする
視線を降ろすと37隊兵Aと37本部書記がいた

120車長「どうした、坊主に嬢ちゃん?」

37隊兵A「いや。あんたたちは一緒に行かなくてよかったのか?
      いかにもすごそうな、モンに乗ってんのに…」

120車長「ああ、一緒に殴り込んでもいいんだが、俺等にはそれよりも大事な役割が
      あるんでな。」

37本部書記「大事な役割?」

120通信「車長!アルマジロより砲撃要請です!」

120車長「来たか!用意しろ!座標設定急げ!」

途端に乗員達は慌しく動き始める

37隊兵A「な、なんだんだ…?」

37本部書記「さぁ…?」


谷側

敵軍の第二派が谷間の道を進んでいる
砦は第一波が制圧する手はずになっているので、第二派の道足は
余裕のあるものだった

敵騎兵「こーんなところでわざわざ戦争しなくても…」

敵騎兵の一人は、本来はのどかな所であろう谷を見渡しながら呟く

ヒュゥゥゥゥゥゥゥ__

敵騎兵「?」

ボガァァァァァン!!!!

敵騎兵「わぁぁぁぁぁぁぁ!?」

突然の爆音と衝撃
部隊は混乱に陥り、敵騎兵は自分の馬から落馬してしまった

敵騎兵「な、な…なんだ一体…!?」

体を起こした敵騎兵の視線の先で、爆炎が上がっっていた


谷間の敵部隊の上へ、次々と迫撃砲弾が降り注ぐ
爆炎は土砂を巻き上げ、歩兵や騎兵、重装備歩兵等を区別無く吹き飛ばす
砲撃により敵は混乱し、隊形を乱していった

隊員G「目標座標の変更を要請!0_9_0!」

隊員Gは地図と実際の地形を見比べつつ、インカムに向けて叫ぶ

通信『了解。ソブリンズ、目標座標を変更、0_9_0、送れ』

座標は通信の扱う無線で、自走迫撃砲へと送られる
そして、その情報が反映され、迫撃砲弾はばらけた敵を追いかけるように着弾する

隊員G「…一門だけじゃ、やっぱ制圧力に限界あるな」

武器A「だが、連中にしてみりゃ、これでも十分脅威だろうよ…」

隊員G「連中が密集戦法なのが幸いしたな」

着弾するたびに、人間が飛び散り四散してゆく
門の近くにいた敵は砦内へと逃げ込んだが、
そこで待ち構えていた軽機と重装歩兵隊の餌食となった

隊員G「数は減ってきたな…連中の退路を断とう。
    再度座標の変更を要請!5_2_2…」

眼下には大量の死体と、負傷して倒れ、もしくはさまよいながら悲鳴を上げる人間が
量産されてゆく

武器A「…見てられん。」


砦屋上

敵将軍「…なんだ…なんだこれは…?」

敵将軍は突然の事態に思考が追いついていなかった
増援であったはずの第二派の大部隊が
突然降り注いだ爆風によって塵となってゆく

敵将軍「こんな馬鹿なことが…」

敵兵C「しょ、将軍!た、大変です…!」

敵将軍「…今度はなんだ?」

敵将軍には、これ以上大変なことなどあるようには思えなかった

敵兵C「て、敵が下層を制圧し、すぐそこまで迫っています!」

敵将軍「…階段入り口を塞いで立て籠もれ…」

敵兵C「わ、わかりました!」


最上階へ通じる階段の入り口

同僚「そうか、わかった…二曹、北側から敵の増援が現れたそうですが、
   迫撃砲の砲撃で撃退。
   現在、退路を断つために阻止砲撃を実施中とのことです。」

同僚は無線で伝わってきた内容を、隊員Eへ伝える

隊員E「この音はやっぱり迫撃砲の音だったか。」

阻止砲撃の音が、砦内にも聞こえてきていた

ドン!ドン!

一方、すぐ側では何かを叩くような音が聞こえる

偵察「クソ!かなり頑丈に固めてやがる。」

最上階へ上がる階段にはバリケードが築かれていた
偵察がバリケードを叩きながら悪態を吐く

隊員E「施設C、爆薬を用意しろ。」

施設C「あの、お言葉ですが隊員E二曹…このバリケード、
    おそらく奥のほうまで固めてあります。
    爆薬で吹き飛ばすのは非効率かと。」

偵察「じゃあ、どうすんだよ?」

施設C「手作業で破壊してくのが確実でしょう。」

偵察「マジかよ…」

支援B「いっそ、この建物ごと爆破しちまうのはどうだ?」

隊員E「馬鹿か!上階には五森国の騎士が捕まってるかもしれないんだぞ?」

施設C「それにそんな事ができるほど爆薬に余裕はねぇです。」

支援B「おいおい、言ってみただけだって…」

同僚(自衛なら問答無用でやりそうで怖い…)

隊員E「誰か、消火斧とスコップを持って来い。
    隊員A、ここの指揮を任せる。」

隊員A「は?わかりました…隊員E二曹はどうされるんですか?」

隊員E「全員でここで燻っててもしょうがないだろう。
    どっかから上階に上がれないか探す。隊員I、隊員F、一緒に来てくれ。」

隊員F(またかよ。)

隊員E「隊員A。バリケードが撤去できたら、お前の判断で突入しろ。」

隊員A「分かりました。」


本隊から離れ、三階に上がれそうなところがないかを探す隊員E達

隊員I「どうです?」

隊員Eは窓から身を乗り出し、外壁を調べている

隊員E「…ここは駄目だな、掴めるところがほとんど無い。」

隊員I「隊員F、そっちはどうだ?」

隊員F「…上れないって事はないでしょうが…」

隊員Eは隊員Fと場所を変わり、覗き込む

隊員E「あー…なるほど。」

隊員Fが調べていた方の外壁は、かなり荒くなっており
所々にとっかかりがあった

隊員E「確かにいけそうだが、少し不安定だな…
    それに三階に窓が無い、一度屋上まで上がるしかないか。」

隊員F「やめといたほうがいいんじゃないですか?」

隊員E「いや、モタモタしててもしょうがない。ここを上るぞ。」


564 名前:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします ◆QTgLSjqNKs[saga sage] 投稿日:2012/09/18(火) 11:09:38.10 ID:znwL02kd0
隊員A「準備はいいか?施設C、やれ!」

施設C「オラッ!」

ドガッ!

施設Cが最後のバリケードを蹴り飛ばす

隊員A「よし行け!GOGOGO!」

そして施設Cが退くのと入れ替わりに、偵察を先頭に四人が突入する

敵兵E「う、うわ!」

蹴り飛ばされたバリケードの下敷きになっていた敵が、
慌てて応戦しようとする

ボウ!

敵兵「ぎゃ!」グシャ

しかし、それもかなわず偵察のショットガンを正面から浴びた

ドンドンドン!

敵兵F「来…ぎゃぁぁ!?」

偵察の目の前にも敵兵がいたが、同僚が偵察の肩越しに発砲、無力化する
出た先は廊下で通路は左右に延びていた

同僚「隊員B、支援B、左を!」

左側を隊員Bと支援Bに任せ、同僚と偵察は右側に銃口をむける
左側廊下には木箱や机が遮蔽物として並べられ、
一番先頭の遮蔽物から敵兵が乗り出し、切りかかろうと迫る

偵察「野郎!」ボウ

敵兵G「がはっ!」ブシュッ

襲い掛かってきた敵兵を撃退し、同僚と偵察はそのまま
遮蔽物へと走り込む

偵察「まだ来るぜ!」

同僚「迎え撃つんだ!」

さらに奥の遮蔽物から、敵兵が迫る
偵察と同僚は迫り来る敵兵を迎え撃つ

隊員A「援護射撃開始!」

ドドドドド!

隊員Aたちが後方から支援射撃を開始
廊下の先へと弾幕が張られる

同僚「オーケー…偵察、行くぞ!」ダッ

遮蔽物から飛び出し、次の遮蔽物へと前進する同僚と偵察
頭を下げ、支援射撃を受けながら次の遮蔽物へ飛び込んだ
その場を奪い返そうと敵は攻撃の手を強める

偵察「奴らも必死だぜ!」

ボウボウ!ドドド!

同僚「…ッ!リロードする、援護を!」

偵察「急げよ!」

同僚は遮蔽物に身を隠し、リロードを行う

敵兵H「うぉぉ!」

弾幕の隙を突き、一人の敵兵が迫り来る

偵察「まずい…!同僚!!」

同僚「!」

敵兵は遮蔽物を乗り越えて同僚へと切りかかった

同僚「ッ、だぁぁ!」

ドスッ!

敵兵H「がっ!?」

同僚は立ち上がる勢いを利用して、敵兵を刺突した

同僚「だっ!」ドカッ

敵の死体を足で押して銃剣を引き抜き、再び身を隠す

偵察「無事か?」

同僚「…どうにか。」

偵察「曲がり角を押さえるぞ、行けるか?」

同僚「大丈夫だ、行くぞ!」バッ

再び遮蔽物を飛び出し前進する
曲がり角の前までたどり着き、壁に背を向けて張り付く同僚と偵察

同僚「備えろ」

同僚は手榴弾のピンを抜き、曲がり角の先へと転がす

ボグァァァン!

同僚「行くぞ」

曲がり角の先へと飛び出す同僚と偵察

同僚「…大丈夫だ」

廊下の先には複数の敵兵の死体が転がっていた

偵察「狭いと効果絶大だな…見ろ、扉だ」

曲がり角の先には扉があった

隊員A「同僚陸士長、無事か?」

後ろから隊員A達が追いついて来る

同僚「大丈夫です。それより、おそらくこの扉の先が指揮所だと思われます」

隊員A「よし、全員突入準備!」

突入に備える隊員達の脇で、同僚はインカムに呼びかける

同僚「隊員B、応答しろ。通路の先で扉を確保した。
    そっちはどうなってる?」

隊員B『隊員Bです、こちら側でも廊下を制圧、扉を押さえました』

同僚「分かった…隊員A三曹、向こうでも扉を確保したそうです」

偵察「よーし、タイミングを合わせて同時に行こうぜ」

隊員A「同僚陸士長、爆破の合図はお前に任せる。」

同僚「了解。」


砦の外壁

隊員E達は外壁をよじ登っていた

隊員E「っと…中でおっ始まったな。」

壁の内側からは微かに戦闘の音が聞こえて来た

隊員F「糞ったれが…飛んだ貧乏くじだ!」

隊員Eの斜め下から続く隊員Fが悪態を吐く

隊員E「中で戦闘が始まったらしい、急ぐぞ。」

隊員I「了解。」

隊員Eと隊員Iは登る速度を上げる

隊員F(簡単に言いやがって…登れそうだ、なんて言うんじゃなかったぜ!)


再び砦内部

扉の前で突入に備える隊員達

同僚「隊員B、そっちは?」

隊員B『準備オーケーです。』

同僚「了解、カウントに合わせて爆破しろ…向こうは大丈夫だ、発破準備。」

施設C「了解!」

施設Cが起爆スイッチに指を掛ける

同僚「…3、2、1…発破!」

ボグワァァァァン!!!

同僚「GO!GO!」

ドアが吹き飛ぶと同時に同僚が突入
偵察と隊員Aがそれに続く
突入先は指揮所であろう大部屋だった

騎士団長「!?」

敵兵I「ひ!なん…ぎゃ!」ブシュッ

同僚は入って右側にいた敵兵を射殺

敵兵J「敵か!?こんな…」

ボウ!

敵兵J「ぎぇっ!?」グシャ

同僚の左側をカバーしていた隊員Aが別の敵兵を撃ち殺した

騎士団長「い、一体何が…わ!?」グォ

突如、騎士団長は拘束されている椅子ごと床に倒れる

騎士団長「っ…痛たた…!き、君達は…!」

偵察「我慢してくれ!」

偵察が付近を警戒しながら言う
身を低くして近づいた偵察が、戦闘に巻き込まれないよう
騎士団長を引き倒したのだ

敵兵K「うぁぁ!」

一人の敵が叫び散らしながら同僚達へ向けて迫る

敵兵K「ぐはっ!?」ドシュ

しかし反対側の扉から突入した隊員B達が、その敵を無力化した

同僚「クリア!」

隊員B「クリアー!」

支援B「こっちもクリアだ!」

偵察「保護対象確保!」

室内は完全に制圧され、
隊員達が各々の状況を報告する

隊員A「警戒続行、油断するな!」

偵察「悪かったな、大丈夫か?」

偵察が騎士団長を引き起こし、拘束を解く

騎士団長「…なんというすばやさだ…」

室内は20秒もかからずに制圧
敵も残り少なかったとはいえ、
騎士団長はその素早さに、驚く以前に呆けることしかできなかった

隊員A「大丈夫ですか?」

隊員Aが騎士団長へ近づき、声を掛ける

騎士団長「き、君達は確か例の東の街の…いやそれよりも、奴を追わなくては!」

偵察「奴?」

騎士団長「ここを攻めてきた連中の将軍だ!私の部下を連れて屋上へ逃げたんだ!」

騎士団長は階段へと繋がる奥の扉を示した

同僚「なんてこった…!」

偵察「追っかけるぞ、隊員B!」

偵察は隊員Bを連れて駆け出した

一方、隊員Aはインカムを隊員Eへと繋ぐ

隊員A「隊員E二曹、応答してください。」

隊員E『ザザ…どうした?』

隊員A「三階を確保しましたが、敵の指揮官が人質と共に屋上に逃げたそうです」

隊員E『本当か?厄介だな…誰か追いかけたか?』

隊員A「偵察陸士長と隊員B一等陸士が。どうされますか?」

隊員E『すまんがこっちはまだ壁を登ってるから、どうにもできん。
    もし、やばければ多少手荒な手段になってもいい。判断はお前に任せる』

隊員A「…わかりました」

隊員E『頼むぞ、こっちもすぐに上がる』

隊員A「…」

同僚「三曹?」

隊員A「大丈夫だ、私達も敵を追うぞ」


屋上への階段

五森騎士「は、放せ!」

敵将軍「うるさい!くそ、くそが!」

敵将軍は五森騎士の腕を引っ張りながら階段を登っていた
その後ろから官僚が続く

官僚「敵将軍殿、一体何が起こっているのだ!?あなた方の兵は?増援は!?」

敵将軍「何起きているか知りたいのは俺の方だ!
    くそぉ!なんだってんだ!!」

悲鳴にも近い声を上げる敵将軍

隊員B「いました!階段の上!」

偵察「そこ、止まれ!」ジャキ

そこへ階段の下から偵察と隊員Bが追いついた

官僚「ひ!?」

敵将軍「ッ!あいつらは…五森国の残党と一緒にいた…!」

敵将軍は、屋上から様子を見た時に
騎士団と一緒に、似たような服装の人物がいたことを思い出した

敵将軍「…くそ!来い!」グイ

五森騎士「あっ!」

敵将軍は五森騎士を引き寄せ、彼女の首元にナイフを突きつけた

偵察「げ!」

敵将軍「見ろ!下手に動けばこいつの喉首を掻っ切るぞ!」

偵察「またこのパターンかよ!」

頭を抱える偵察の元へ、同僚達が追いつく

同僚「どうした…あ!」

騎士団長「五森騎士!」

同僚達も、敵将軍と五森騎士の状態を見て現状を把握する

五森騎士「団長!私のことなどかまわずに…むぐっ!?」

敵将軍「黙れ!動くなよ、こいつの命が惜しければな!」

騎士団長「くそ!卑怯な…!」

騎士団長は動けずに、敵将軍を睨みつける
その一方で、同僚や偵察はうんざりした表情を浮かべていた

同僚「二度もこんな場面に遭遇すると、さすがに嫌になるな…」

偵察「俺は戦士のねーちゃんの件も含めりゃ三度目だぜ…」

隊員B「のんきなこと言ってる場合じゃないでしょう!フラッシュ弾投げますか!?」

同僚「馬鹿、階段だぞ!下手してこっちに転がってきたらどうする!」

隊員A(くそ、撃たせるべき?どうすれば…!?)

敵将軍「何をごちゃごちゃと話している!そこを開…!?」

唐突に敵将軍の言葉が止まる
ムズッ、と自分の首を何者かがつかむのを感じたからだ

敵将軍「ひ!?」

同時にナイフを握る手も掴まれる

ドガッ!

そして敵将軍は仰向けに床へと引き倒された

敵将軍「ぐぁぁ…何が…!?」

引き倒され、痛みに悶える敵将軍の目に映ったのは隊員Eの姿

ドゴォ!

敵将軍「ぐぇぇ!?」

そして腹部への鈍痛を最後に、敵将軍は意識を失った

隊員E「…よぅし」

気絶を確認すると、隊員Eは敵将軍の体をひっくり返し
後ろ手に拘束した

官僚「う、ああ…」

ジャキ

官僚「ひ!?」

隊員I「動かないように、手を頭に」

隊員Iが官僚に銃を突きつける
敵将軍達の無力化と同時に、同僚達が駆け上がってきた

隊員A「二曹!」

隊員E「間に合ってよかった…周辺を警戒!同僚、彼女を頼む。」

同僚「了解!」

同僚が五森騎士へと駆け寄る

五森騎士「だ、大丈夫だ…」

同僚の手を払いのける五森騎士

五森騎士「あっ…」フラッ

同僚「おい!」バッ

しかし足元がふらつき、結局同僚に支えられる形となる

同僚(!…華奢な体だ…こんな娘まで戦っていたのか…)

隊員E「どっかで休ませてやったほうがいいな。」

同僚「下の部屋を使いましょう。歩ける?」

五森騎士「だ、大丈夫だ…」

五森騎士は同僚に支えられ、階段を下っていった

隊員E「偵察。一組を連れて、残敵がいないか片っ端から洗え」

偵察「了解」

隊員E「隊員B、衛隊A、他にけが人がいないか調べてくれ」

隊員B「分かりました」

隊員I「こいつらはどうします?」

隊員Iは敵将軍等を示す

隊員E「どこかに閉じ込めて見張りを立てろ。
    他にも投降者いたら、一まとめにしておくんだ」

隊員I「了解」

隊員達は各々の作業へと移っていった

隊員A「…」

隊員E「隊員A、どうした?」

隊員A「い、いえ。何も…」

隊員E「お前は同僚と一緒にあの娘を見てやれ」

隊員A「分かりました…」


隊員Eは屋上から一体を見渡す
迫撃砲の砲撃により門の先の地面は穴だらけになり、
大量の人や馬のようなものが転がっているのが、屋上からでも見えた

偵察「わーお…」

隊員E「派手にやったもんだ…」

騎士団長「これは…」

隊員G『ザザ…隊員E二曹、応答してください。隊員Gです』

隊員E「こちら隊員E、砦内部はほぼ制圧した」

隊員G『やっぱりですか。こっから二曹の姿が見えますよ。
    こっちは門の西側の城壁上にいます。』

城壁上にはこっちに向けて手を振る隊員Gの姿があった

隊員E「ああ、見えてる。そっちはどうだ?敵の増援は大丈夫だったのか?」

隊員G『第7の連中の砲撃でほとんど片付きました。生存者がいくらら投降してきまして、
    隊員H等と騎士たちが地上で対処してます』

隊員E「分かった、そっちに何人か送る。お前たちはそのままそこで見張りを続けろ」

隊員G『了解。切ります』

隊員Eは交信を終えると、今度は通信へとインカムを繋ぐ

隊員E「通信、聞こえるか?」

通信『こちら通信一士』

隊員E「砦内の制圧を完了した。自走迫撃砲にそのことを伝えてくれ。
    それと37隊から人手をよこしてもらってくれ、ともな」

通信『分かりました、伝えます』

隊員E「頼む」

インカムを切る隊員E

騎士団長「これが噂に聞く力だというのか…」

騎士団長はいまだに一帯を見つめていた

隊員E「騎士団長さん、すぐに37騎士隊が到着します。
    あなたも休まれたほうがいい」

騎士団長「!、あ、ああ。かたじけない…そうさせてもらう…」

隊員E「偵察、一組はどうした?」

偵察「今やらせてますよ、それより屋上をカラにしていいのか気になったもんで」

隊員E「心配ない。隊員F、屋上で見張りにつけ。何かあればすぐに報告しろ」

隊員F「了解」

隊員E「さ、騎士団長さん、行きましょう」

隊員Eと騎士団長は、砦内へと入っていった


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